トレーニング初心者に推奨する筋トレメニュー(分割法)
現在の筋トレメニューのコンセプト
実際の筋トレで何をやるかって迷ったことがあると思います。
というか、現在進行形で悩みながらトレーニングしていくものだと思います。
私自身も試行錯誤しながら現在のメニューにたどり着いたのでご紹介します。
ポイント1. 2分割する
普通は、胸、背中、足などでの3分割が一般的ですが、それだと初心者が筋肥大するのに最適な「1部位あたり週3回トレーニング」が達成できません。
ですので、
2分割、週6トレでABABABオフ
としています。
ポイント2. 拮抗筋で分割する
2分割法を採用する場合、Push&Pullのプレス系とローイング系で分割する、つまり胸+上腕三頭筋、背中+上腕二頭筋で分割するのが一般的だと思います。
しかしそれだと、補助筋が疲れて後半の種目で強度が維持できないので、
することで、拮抗筋とのセットにしています。
こうすると後半になっても補助筋が疲労することなく、重要な胸と背中でのトレーニング強度を維持できます。
ポイント3. スーパーセット法で行う
社会人が筋トレするには時短が重要です。
セット間インターバルって時間もったいなくないですか?
異なる筋群へのトレーニングを組み合わせて行うスーパーセット法を採用することで、他種目をやっている間にその前にトレーニングした部位の回復ができるため、インターバル時間を極力短くできます。
具体的には、
胸トレ①セット目:約1分でワークアウト
→インターバル 1分
→上腕二頭筋トレ①セット目:約1分でワークアウト
→インターバル 2分
→胸トレ②セット目...
というように、行っています。
このスーパーセット法でやれば
胸トレ①セット目と②セット目の間のインターバルは4分
と十分に取ることができるため、しっかり回復した状態で行えてトレーニングボリュームを維持できますし、かつ時短できて早くトレーニングが終わるので一石二鳥です。
ポイント4. 3セットで行う
セット数は筋肥大には4セットが理想というメタアナリシスがありますが、3セットでも大きく減ることはないので(Effet Size 1.94 vs 2.28)、私は時短のため3セットを採用しています。
また、個人差があると思いますが、4セット以上のセット数を行うには、強い精神力が必要になり、特に私のような初心者はトレーニング強度を維持できません。
疲労でフォームが崩れると怪我のリスクも増大するため、現時点では3セットが最適と判断しています。
もう少し十分にトレーニング経験を積んでからは、
トレーニング頻度を一部位あたり週2回に変更して、3分割法とし、1回4セットにする予定です。
実際のメニュー
以上を踏まえて、現時点での私がオススメするトレーニングを提示します。
2分割法、週6トレでABABABオフです
Aメニュー(胸+上腕二頭筋(腕頭骨筋)をターゲット)
1-1. ベンチプレス
1-2. ダンベルカール
2-2. ハンマーカール
*週1回.バーベルスクワット
大胸筋にはベンチプラスとインクラインダンベルフライを採用しています。
ベンチプレスはデクラインが筋活動が最も高く、高重量を扱うことができるので、いわゆるケツ上げベンチを中心にやっています(ストリクトなフォームでもやります)。
何かと批判されるケツ上げですが、初心者にはよくわからないレッグドライブの感覚もつかみやすいですし、身体全体の連動性が上がるのでおすすめです。
インクラインダンベルフライは鍛えにくい大胸筋上部に刺激を入れられるように、山澤礼明氏がYoutubeで紹介していたフォームで行っています。
大胸筋の鍛え方を筋肉博士こと山本義徳先生から教わりました。101の理論〜胸トレ〜
上腕二頭筋にはダンベルカールとハンマーカールを採用しています。
上腕二頭筋は逆手懸垂がコンパウンド種目でかつ上腕二頭筋に刺激が入るので理想的なのですが、スーパーセット法でベンチプレスの後に行うと疲労感が強く、トレーニングボリュームを維持できないので、ダンベルカールをメインとしています。
また、腕橈骨筋は前腕の筋肉のなかで最も大きく、ファンクショナルな面で非常に重要な筋肉です。物を持ったりする際に使われます。そのため、腕撓骨筋を鍛えられるハンマーカールを行うようにしています(腕撓骨筋はパラレルハンドチンニングでも鍛えられます)。
Bメニュー(背中+肩+上腕三頭筋がターゲット)
1-1. 順手懸垂
1-2. ディップス
2-1. ワンハンドダンベルロウ
2-2. アーノルドプレス
*週1回.デッドリフト
広背筋および大円筋をターゲットとした種目には順手懸垂(ワイドチンニング)を採用しています。
懸垂は自重トレーニングのため怪我をしにくいですし、高負荷のため懸垂だけでも背中は十分に発達します。30回以上できるようになれば加重するのを勧めます。
ディップスは大胸筋下部と上腕三頭筋のメイン種目として行っています。
同じく自重ですが、前傾した姿勢で行うことで大胸筋下部に刺激が入るだけでなく、肩へのストレスも減るので、必ず前傾して行います。
僧帽筋中部は初心者には刺激が入りにくく、種目は現在もかなり試行錯誤しているのですが、可動域が広く、左右差も是正できるためこの種目にしています。
肩の種目はアーノルドプレスにしています。
プレス系のコンパウンド種目であり、大胸筋上部にも刺激が入るのと、通常のショルダープレスと比較してダンベルが身体のやや前方を通過するフォームで行っているので肩へのテンションがかからず怪我をしにくいです。
肩トレは特に怪我をしないことが大前提と考えています。
また、デッドリフトは脊柱起立筋のトレーニングに必須と考えています。
「足腰を鍛える」といいますが、脊柱起立筋を鍛えることはファンクショナルな身体作りに必須です。
しかし釣り竿デッドと呼ばれる誤ったフォームで行うと怪我をしやすいので、フォームが非常に重要です。可能なら短期的なパーソナルトレーニングか経験者から指導されるのを勧めます。
金銭的理由などで困難であればyoutubeなどで徹底的にフォームを研究して鏡でフォームを確認しながら慎重に行う必要があります。
それほどデッドリフトは初心者には難しいトレーニングですが、ベネフィットは大きいので取り入れることを強く勧めます。
トレーニング強度について
トレーニングはいずれも8RM(8回が限界の重量)で行っています。
初心者は軽い負荷でも筋肥大が得られますが、筋力も伸ばしていきたいのと、8RMが経験を積んだトレーニーにおいても科学的に最も効果が大きい強度だからです。
上腕二頭筋については20RMのほうが筋肥大するという研究があるため、筋力を伸ばすために8RMで行う日と筋肥大を狙って20RMで行う日を分けています。
スクワットはもともと大学時代の部活動の影響で脚が太く、ファッションのためにこれ以上筋肥大したくないので、筋力向上のみを狙って3RMで行っています。
デッドリフトについては、参考となる文献を発見できませんでした。かなり悩みましたが、アメリカのStrongLift 5×5などで採用されている5RMとしています。
5RMで行うと疲労でフォームが崩れることも少なく、筋力向上と筋肥大効果の両方を狙うことができます。
まとめ
現時点での私のトレーニングメニューをご紹介しました。
2分割、週6トレでABABABオフ。
拮抗筋とのスーパーセット法で3セット。
参考にしていただければ幸いです。
結局、筋トレは週何回、何セット、どのくらいの強度でやればよいのか?
筋肥大が最速となるトレーニング頻度は存在するのか?
筋トレを始めると必ず突き当たるのが「結局どのくらいやったらいいのか?」という悩みです。
ネットで情報を検索すると、やりすぎるとオーバートレーニング症候群になる、週3回はやりすぎである、しっかり追い込めば週1回でも十分である、など様々な情報がでてきます。
いったい何が正しいのでしょうか?
過去の研究も踏まえて、最新の論文で得られた結論をご紹介したいと思います。
(以下のトレーニング頻度は「各部位あたり」という意味です。つまり、週2回のトレーニングは大胸筋に対して週2回という意味であり、例えば、胸、背中、足の3分割法を採用して週6回トレしていても、各筋群に対しては週2回ということになります。)
週1回では筋肉はつかない
「週に1回のトレーニングでもしっかり追い込めば筋肥大は可能!」「週に1回で結果を出す!」などと書かれているサイトを多く見かけます。
しかしながら、
週1回の筋トレはあまり効果がありません!
2016年に報告されたメタアナリシスという信頼度の非常に高い手法を用いた研究で、10個の先行研究を検証した結果、
週1回と週に複数回のトレーニングの比較では、筋肥大効果はほぼ2倍違う
(3.7±0.7% vs 6.8±0.7%、論文1より引用)
ということがわかっています。
ただ、この論文ではサンプル数が少なく、週2回と週3回の違いについては結論を出せなかったようです。
頻度ではなく総負荷量という説
また、2018年に報告された前向き研究では(エビデンスレベル、つまり情報の信頼度はメタアナリシスと比べるとかなり落ちます)、週の総負荷量を同じにして週3回と週6回のトレーニングを比較しています(論文2より引用)。
有名なリハビリmemoさんのブログでも、
この研究結果からわかることは、筋肥大の効果は週単位の総負荷量で決まるとともに、週単位の総負荷量が同じであれば、週の頻度は3回でも6回でも効果に変わりはないということです。
筋トレの効果を最大にする週の頻度(週に何回?)の最新エビデンス - リハビリmemo
と紹介されており、
週の総負荷量から週の頻度を決めれば良いと結論付けています。
ですが、私としては、その週の総負荷量はどう決めたらよいのか、多ければ多いほどよいのか、オーバートレーニングにならないか、など、結局どのくらいやったらいいかわからないままでした。。。
結局、最適な筋トレ頻度とは?
しかし、次に紹介する論文を読み、この疑問は払拭されました!
(前置きが長くなりすみません。)
2003年に報告された140もの先行研究を検証したメタアナリシスで、その答えを示しています。
最適なトレーニング頻度は初心者と経験者で異なる
下の図はトレーニング初心者と経験者における週あたりのトレーニング頻度とその効果(Effect Size)を示したものです。
この結果からわかることは、
初心者は週2回よりも週3回のほうが効果が高い!(1.2 vs 1.9)
経験者は週3回よりも週2回が最適!(1.4 vs 0.7)
ということです。
なぜ初心者と経験者で異なるのか?
なぜトレーニング初心者と経験者で最適な頻度が異なるのかについては、Discussionという議論の部分を読んでも書かれていませんでした。
私の推測としては、初心者はフォームが不安定であったり、神経系の改善の程度が経験者に比べて筋力も伸びに影響を大きく及ぼすので、週の頻度が高頻度のほうがトレーニング効果が高かったのではないかと考えています。
また、トレーニング経験者はトレーニング1回あたりの強度が高い傾向があり(この論文では、全員が70-85%1RMで行っていた)、週3回ではMaximum recoverable volume (MRV: 回復できるトレーニングの限度)を超えてしまい、オーバートレーニングになるのかもしれません(MRVについては現在結論が出ていません、週15-25セットが上限ではないかと示唆する論文がいくつか出ています)。
最適なセット数は?
トレーニングをしていて気になるのは頻度だけではありません。セット数についてもどのくらいやったらいいのか悩んだ事があるかと思います。
私は筋トレを初めた際に、
「初心者は10回3セットだ!」
と書かれているのを見て、「よーし、とにかく3セットやるぞ!」と思ったのを今でも覚えています。
では、これについて科学はどのように結論を出したのでしょうか?
初心者も経験者も3-4セットが理想
下の図は初心者と経験者におけるセット数とトレーニング効果を表したものです。そのどちらも3−4セットでピークを迎えています。
これから言えることは、
初心者も経験者も4セットが理想だが3セットでもほぼ同等!
ということになります。
トレーニングを少ないセットで終えれる利点
ボディビルディング選手やプロのフィジーク選手のようにトレーニングが仕事の一部であるような例外的な方々を除いて、私のような社会人にとってトレーニング時間は死活問題です。
セット数が多ければインターバルも含めてそれだけ時間を使いますし、セット数が多くなればなるほど疲労感やトレーニング強度を維持する精神力も必要になります。
そのため、私は4セットではなく、3セットでトレーニングを行っています。(これは個人の体験のためエビデンスはまったくありませんが、十分に筋肥大および筋力増強を得られています)。
最適なトレーニングの強度は?
では強度はどうでしょうか?
前述の10回3セット法とは、10回が限界の重さ、つまり75%1RM (RM: repetition maximum、1RMはその人の最大挙上重量のことで、100kgのベンチプレスがmaxであれば75%1RMは75kgでベンチプレスを行うことを指します)で行うトレーニングです。
果たしてこれは正しいトレーニング強度なのでしょうか?
最適なトレーニング強度は初心者と経験者で異なる
下のグラフは初心者と経験者におけるトレーニングの強度とその効果を示したものです。初心者の場合は波状の線を描いており、弱い強度に対してもトレーニング効果が出ていますが、経験者の場合は80%1RMにピークを迎えています。
これから言えることは、
初心者では軽い負荷でも筋肥大が得られる!
経験者では80%1RM、つまり8RM(8回が限界の重さ)が理想!
ということになります。
私もそうでしたが初心者の場合はフォームが不安定であり、高強度で行うと怪我のリスクが高いため、60%1RM程度の負荷を中心としてセットを組んでいき、徐々に高強度に移行していくのがいいと考えています。
経験者の場合はある程度高重量でトレーニングしていかないと効果が出ないというのは経験的にわかっていることだと思いますが、従来言われている「10回3セット」は限りなく正解に近いもののやや負荷が軽く、「8回3セット」が正解のようです。
まとめ
理想的な筋トレは、以下のようになります。
・初心者は週3回3セット!60%1RM程度(25回が限界の重量)でも十分である!
・経験者は週2回3-4セット!80%1RM (8回が限界の重量)で行う!
時間を無駄にすることなく、最速で結果を出していきましょう!
引用文献(References)
1. B. J. Schoenfeld et al. Effects of Resistance Training Frequency on Measures of Muscle Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med (2016) 46:1689–1697.
2. Colquhoun RJ et al. Training Volume, Not Frequency, Indicative of Maximal Strength Adaptations to Resistance Training. J Strength Cond Res. 2018 May;32(5):1207-1213.
3. Rhea MR et al. A Meta-analysis to Determine the Dose Response for Strength Development. Med Sci Sports Exerc. 2003 Mar;35(3):456-64.
ブログ「まっするクリニック」のコンセプト
自己紹介
はじめまして。私は30代前半の医師です。
若い頃は部活動などで運動をしていましたが、社会人になってから多忙になり、運動とは無縁の生活を約10年続けてきました。
そのような中で、仕事の多忙さ、ストレスから精神的に不調をきたしてしまい(軽度のうつ病になりました)、仕事を休まざるを得ない状況になりました。
私の場合は軽症であったため、休職を経て体調も徐々に回復していくことができたのですが、そのなかで大きな助けになったのが筋トレでした。
「健全な精神は健全な肉体に宿る」
という言葉を思い出し、うつ病の治療の一環として筋トレをはじめたのが、2019年6月末です。
そこから徐々に筋肉がつきはじめ、それとともに精神的にも安定していくのがわかりました。
現在は若い頃も含めて人生で最も肉体的に優れた状態を得ることができ、趣味としての筋トレが自分にとって非常に重要な生活の一部となっています。
このブログの目的
私は医師なので、医療をしていくなかで、科学的に正しいか正しくないか、つまり効果が証明されているのかどうかということを常に調べ、治療に活かすということをしてきました。
医療の世界では、そのように
科学的に正しいかどうかを「エビデンス」といいます。
また、「エビデンスがある治療」というのは「科学的に正しいことが証明されている治療」という意味になります。
そして、
筋力トレーニングや食事、ダイエット情報にもエビデンスが存在します。
しかしながら、エビデンスにも、エビデンスレベルという「科学的な確からしさの程度」に違いがあり、どれが正しい情報なのか非常にわかりにくいのが現状です。
私自身、筋力トレーニングをしていくなかで、何をしたらいいのか?、どのくらいの頻度でやったらいいのか?、食事はどうしたらいいのか?、など非常に多くの疑問が出てきました。
しかし、
それらのエビデンスを包括的にまとめている書籍やサイトはあまり多くない
のが現状でした。
また、特に、
ネットで紹介されているダイエットに関する情報の多くは科学的には正しくない
ことが多く、疑問を抱いていました。
しかたなく、自分自身で公開されている論文などを読み、筋トレや栄養などに関するエビデンスを調べ、トレーニングを続けてきたのですが、それらをまとめた書籍やブログがあればもっと楽だったのになあと思っています。
また、現在はジムに通っていますが、ジムでもあまり正しいとは言えない筋トレのやり方をしている人が多く、もっと正しい筋トレの知識が世の中に広まればいいのになあと思っていました。
そのため、
科学的に正しい筋トレ、食事、ダイエットに関する包括的なガイドラインを作成する
ためにこのブログを立ち上げました。
少しずつではありますが、有益な情報を提供していけたらと考えています。
まとめ
このブログでは30代の筋トレ好きな医師が、
科学的に正しい筋トレ、食事、ダイエットに関する情報を提供しています。
筋トレは科学的に正しい方法で行なえば必ずあなたの人生にプラスの影響を及ぼしてくれると信じています。
このブログが少しでもその手助けになれば幸いです。