まっするクリニック

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医師が教える科学的に正しい筋トレ×食事×ダイエット

結局、筋トレは週何回、何セット、どのくらいの強度でやればよいのか?

 

筋肥大が最速となるトレーニング頻度は存在するのか? 

筋トレを始めると必ず突き当たるのが「結局どのくらいやったらいいのか?」という悩みです。

ネットで情報を検索すると、やりすぎるとオーバートレーニング症候群になる、週3回はやりすぎである、しっかり追い込めば週1回でも十分である、など様々な情報がでてきます。

いったい何が正しいのでしょうか?

過去の研究も踏まえて、最新の論文で得られた結論をご紹介したいと思います。

(以下のトレーニング頻度は「各部位あたり」という意味です。つまり、週2回のトレーニングは大胸筋に対して週2回という意味であり、例えば、胸、背中、足の3分割法を採用して週6回トレしていても、各筋群に対しては週2回ということになります。)

 

週1回では筋肉はつかない

「週に1回のトレーニングでもしっかり追い込めば筋肥大は可能!」「週に1回で結果を出す!」などと書かれているサイトを多く見かけます。

しかしながら、

週1回の筋トレはあまり効果がありません!

 

2016年に報告されたメタアナリシスという信頼度の非常に高い手法を用いた研究で、10個の先行研究を検証した結果、

週1回と週に複数回のトレーニングの比較では、筋肥大効果はほぼ2倍違う

(3.7±0.7% vs 6.8±0.7%、論文1より引用)

ということがわかっています。

ただ、この論文ではサンプル数が少なく、週2回と週3回の違いについては結論を出せなかったようです。

 

頻度ではなく総負荷量という説

また、2018年に報告された前向き研究では(エビデンスレベル、つまり情報の信頼度はメタアナリシスと比べるとかなり落ちます)、週の総負荷量を同じにして週3回と週6回のトレーニングを比較しています(論文2より引用)。

有名なリハビリmemoさんのブログでも、

この研究結果からわかることは、筋肥大の効果は週単位の総負荷量で決まるとともに、週単位の総負荷量が同じであれば、週の頻度は3回でも6回でも効果に変わりはないということです。

筋トレの効果を最大にする週の頻度(週に何回?)の最新エビデンス - リハビリmemo

と紹介されており、

週の総負荷量から週の頻度を決めれば良いと結論付けています。

 

ですが、私としては、その週の総負荷量はどう決めたらよいのか、多ければ多いほどよいのか、オーバートレーニングにならないか、など、結局どのくらいやったらいいかわからないままでした。。。

 

結局、最適な筋トレ頻度とは?

しかし、次に紹介する論文を読み、この疑問は払拭されました!

(前置きが長くなりすみません。)

2003年に報告された140もの先行研究を検証したメタアナリシスで、その答えを示しています。

 

最適なトレーニング頻度は初心者と経験者で異なる

下の図はトレーニング初心者と経験者における週あたりのトレーニング頻度とその効果(Effect Size)を示したものです。

この結果からわかることは、

初心者は週2回よりも週3回のほうが効果が高い!(1.2 vs 1.9)

経験者は週3回よりも週2回が最適!(1.4 vs 0.7)

ということです。

 

なぜ初心者と経験者で異なるのか? 

なぜトレーニング初心者と経験者で最適な頻度が異なるのかについては、Discussionという議論の部分を読んでも書かれていませんでした。

私の推測としては、初心者はフォームが不安定であったり、神経系の改善の程度が経験者に比べて筋力も伸びに影響を大きく及ぼすので、週の頻度が高頻度のほうがトレーニング効果が高かったのではないかと考えています。

また、トレーニング経験者はトレーニング1回あたりの強度が高い傾向があり(この論文では、全員が70-85%1RMで行っていた)、週3回ではMaximum recoverable volume (MRV: 回復できるトレーニングの限度)を超えてしまい、オーバートレーニングになるのかもしれません(MRVについては現在結論が出ていません、週15-25セットが上限ではないかと示唆する論文がいくつか出ています)。

 

最適なセット数は?

レーニングをしていて気になるのは頻度だけではありません。セット数についてもどのくらいやったらいいのか悩んだ事があるかと思います。

私は筋トレを初めた際に、

「初心者は10回3セットだ!」

と書かれているのを見て、「よーし、とにかく3セットやるぞ!」と思ったのを今でも覚えています。

では、これについて科学はどのように結論を出したのでしょうか?

 

初心者も経験者も3-4セットが理想

下の図は初心者と経験者におけるセット数とトレーニング効果を表したものです。そのどちらも3−4セットでピークを迎えています。

これから言えることは、


初心者も経験者も4セットが理想だが3セットでもほぼ同等!

ということになります。

 

レーニングを少ないセットで終えれる利点

ボディビルディング選手やプロのフィジーク選手のようにトレーニングが仕事の一部であるような例外的な方々を除いて、私のような社会人にとってトレーニング時間は死活問題です。

セット数が多ければインターバルも含めてそれだけ時間を使いますし、セット数が多くなればなるほど疲労感やトレーニング強度を維持する精神力も必要になります。

そのため、私は4セットではなく、3セットでトレーニングを行っています。(これは個人の体験のためエビデンスはまったくありませんが、十分に筋肥大および筋力増強を得られています)。

 

最適なトレーニングの強度は?

では強度はどうでしょうか?

前述の10回3セット法とは、10回が限界の重さ、つまり75%1RM (RM: repetition maximum、1RMはその人の最大挙上重量のことで、100kgのベンチプレスがmaxであれば75%1RMは75kgでベンチプレスを行うことを指します)で行うトレーニングです。

果たしてこれは正しいトレーニング強度なのでしょうか?

 

最適なトレーニング強度は初心者と経験者で異なる

下のグラフは初心者と経験者におけるトレーニングの強度とその効果を示したものです。初心者の場合は波状の線を描いており、弱い強度に対してもトレーニング効果が出ていますが、経験者の場合は80%1RMにピークを迎えています。

これから言えることは、

初心者では軽い負荷でも筋肥大が得られる!

経験者では80%1RM、つまり8RM(8回が限界の重さ)が理想!

ということになります。

 

私もそうでしたが初心者の場合はフォームが不安定であり、高強度で行うと怪我のリスクが高いため、60%1RM程度の負荷を中心としてセットを組んでいき、徐々に高強度に移行していくのがいいと考えています。

経験者の場合はある程度高重量でトレーニングしていかないと効果が出ないというのは経験的にわかっていることだと思いますが、従来言われている「10回3セット」は限りなく正解に近いもののやや負荷が軽く、「8回3セット」が正解のようです。 

 

まとめ

理想的な筋トレは、以下のようになります。

・初心者は週3回3セット!60%1RM程度(25回が限界の重量)でも十分である!

・経験者は週2回3-4セット!80%1RM (8回が限界の重量)で行う!

時間を無駄にすることなく、最速で結果を出していきましょう!

 

引用文献(References)

1. B. J. Schoenfeld et al. Effects of Resistance Training Frequency on Measures of Muscle Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med (2016) 46:1689–1697. 

2. Colquhoun RJ et al. Training Volume, Not Frequency, Indicative of Maximal Strength Adaptations to Resistance Training. J Strength Cond Res. 2018 May;32(5):1207-1213.

3. Rhea MR et al. A Meta-analysis to Determine the Dose Response for Strength Development. Med Sci Sports Exerc. 2003 Mar;35(3):456-64.